食事を噛む回数を調べた報告によると、戦前の食事時間の平均は22分で、食べ終わるまでに1420回噛んでいたそうです。 ところが現代では、食事時間の平均は11分で、噛む回数は620回。日本人は、戦前の半分の回数しか噛まなくなってきているのです。戦前の食事は、純和風。麦などの雑穀やいも類、根菜類、高野豆腐などの乾物がよく食べられていました。これらの食事はよく噛まないと消化できないので、昔の人はあごをよく動かしていたのです。
よく「噛む」と、健康面でどのような効果が得られるのでしょう。食べ物を細かく噛み砕いて、消化酵素を含んだ、だ液と混ぜ合わせることによって「消化を助ける」のはもちろんですが、だ液がたくさん出ることによって「虫歯を予防」する効果もえられます。虫歯は、ミュータンス菌などの虫歯菌によって起きますが、だ液には虫歯菌が作る酸を薄める働きがあるのです。よく噛んで、だ液がたくさん出る子どもには、虫歯が起きにくいのです。
赤ちゃんがおっぱいを吸うのは、栄養をもらうほかに、精神安定剤としての役割があるとされていますが、「噛む」ことにも同じような役割があります。 大リーグの投手などが、試合の緊張をやわらげるためにガムを噛んでいる姿をテレビで見かけたことはありませんか? 物を「噛む」と、体の緊張がやわらいで、ストレスを解消するのに役立つものです。また、あごの運動が筋肉の刺激となって脳に伝わって、脳の働きを活性化してくれます。 「情緒が安定」して、「脳の活性化」にも役立つ。噛むことには、意外な効能があります。
早食い、大食いの子どもは肥満になりやすいものです。よく噛まずに食べてしまうと、脳の満腹中枢が「おなかがいっぱいになったよ!」「もう食べるのをやめよう!」と指令を出す前に、必要以上に食べてしまうことになりがちです。 ゆっくりよく噛んで食事をとれば、噛むことで満足感がわき、体にとって必要な量だけで満腹感がえられます。太めの子には、毎回の食事によく噛む食品を加えて、噛むことで満足感がえられるように工夫していきましょう。
最近、噛めない子どもが増えてきていると言われています。また、今の子どもは噛まないとも言われます。保育園の給食などで子どもたちの食べるようすを見てみると、「時間内に食べ終わらない子」「口の中にいつまでも食べ物が残っている子」がいる一方で、「あっという間に(噛まずに)食べ終わってしまう子」と、じつにさまざまです。でも、しっかり噛んでいない点では、共通しているそうです。噛むことが苦手な子どもは、確実に増えているのですね。
子どもが、よく「噛む」習慣を身につけるためには、「噛む」必要のある食品を料理やおやつにひんぱんに取り入れていく必要があります。ところで、かむ必要のある食品というとどのようなものが思い浮かびますか?
魚介類 | するめ、煮干、小魚、桜えび、海藻類(こんぶ、わかめ、ひじき)、貝類 |
根菜類 | ごぼう、れんこん、たけのこ、にんじん、大根 |
葉物野菜 | ほうれんそう、小松菜、春菊 |
果物 | りんご、なし |
いも・豆類 | さつまいも(干しいも)、大豆、いんげん豆、枝豆 |
乾物 | 切り干し大根、かんぴょう、高野豆腐 |
ナッツ類 | ごま、ピーナッツ、アーモンド、くるみ |
噛む食品の中には、おやつとしてもおすすめしたい食品が多くあります。するめや煮干を、子どもにかじらせてみてはどうですか?するめをちょっとあぶったり、煮干をからいりすると、香ばしくなって食べやすくなります。夏なら、ゆでたての枝豆やとうもろこし、秋なら、りんごやなし。干しいもや焼きいも、大学いももいいですね。健康的なおやつを工夫しながら、噛む機会をどんどん増やしてみてください。